暴君と魔女





「・・・・っ・・あの・・・、ここ・・・で?」


「・・・・・・」



言われた言葉を頭で反芻し、チラリと部屋を見渡してから視線をゆっくりと戻していく。



「・・・何か問題が?」


「い・・・え・・・・、その、私の乏しい知識では・・・その・・・ベッドとか・・・・」



そこまで口にして、自分が何かとてつもない羞恥を晒したように顔を華奢な手で覆う四季が耳まで赤くなるのを無言で見つめてしまった。


これは・・・・・、


新鮮・・・・。


そうして気がつく自分の割と豊富な経験の記憶。


そのどこを攫っても記憶がないそれに気がつき、その事実に自分で驚いて思わず口にした。



「初めてだ・・・・・」


「はっ?!・・・えっ、あ、はい、・・・だからそう何度も・・・」


「違う・・・こっちの話だ」



羞恥に染まりながら俺の言葉に過敏に反応した四季に小さく息を吐きながら否定を返す。


四季が経験そのものが初めてだというのなら、そういう女を相手にするのが自分は初めてだと気がつき改めて四季を見つめてしまう。


おどおどと落ち着きなく視線を泳がす姿を捉え、今までの女の様に扱えないと理解する。


と・・・・同時に・・・。


どう進めていけばいいんだ?


なんてまるで初めての時以上の困惑。


初めての女の感覚なんて理解しがたい物で、それでもさっき四季が漏らした言葉の通りオーソドックスにベッドに移動した方がいい物なのかもしれないと結論を出す。


って言うか・・・セックスするのに頭を使うのもなかなかないな。



「・・・・・寝室・・・行くか?」


「っ・・・か、確認取らないでください」


「じゃあ、行くぞ」


「で、でも、秋光が寝てます」


「っ・・・面倒くせぇ・・・」


「っ・・・」



思わず零した言葉に申し訳なさそうに顔を歪ませた四季に、さすがに失態だと僅かに焦り、それでもまるで子供のその時間みたいにもどかしい感覚に変な葛藤が胸に渦巻く。


初めての女のメンタルなんて知らねぇよ・・・。


でも、とにかく・・・・この部屋じゃ無理だって事だろ。


小さく舌打ちをする。


その舌打ちに全ての感情を逃すように響かせ、驚いた反応を見せた四季を勢い任せに引き寄せ唇を重ねすぐに離れる。


あの透き通るグレーを見つめる為に。