暴君と魔女





「・・っ・・・条件を・・・・」



響く声に動きが止まる、近づけた距離を僅かに離しそのグレーを再度覗きこんで深い呪いをかけられる。



まっすぐに俺の双眸を覗き込み、怯みながらも四季がその言葉を弾きだす。




「・・・・・・抱かれる・・・【条件】をください」


「・・・・・【条件】?」




四季の言葉に聴きたくないという危険警報が鳴り響くのに、すでに魔力に引き込まれたその時間。



「・・・・・・見合う条件の為に働くのが【仕事】でしょう?」


「・・・・・仕事?」


「私と望様の関係は仕事の契約から成り立っているんです。

買われた時から・・・・私と望様は主従関係でしか成り立たないのですよ」



お前は・・・・・。


どうしてそうやって・・・・俺の感情を乱していく・・・。


【愛】ではなく【仕事】で俺の要求を受けるという意思表示に致命傷になりそうな胸の痛みが走るのに、、


もうとっくに限界を超えている理性。


それでも・・・・・四季の存在を縛れるというのなら・・・、、


このまま・・・、全てを手にしていいというのなら・・・。


暴君の名のままに、【条件】で擬似的な【愛】を買おうじゃないか。




「何でも・・・言え。・・・・・・条件を呑んでやる」




魔女の持ちかけた契約に乗った。


持ちかけたのは魔女の方なくせに、俺が契約に応じれば悲しそうに微笑んで見せる。


やめろ・・・・・。


俺にそれを言わせたのはお前のくせに・・・。


罪悪感が徐々に体を占めるというのに決して契約破棄やその手を離す事が出来ず。


俺の意思が揺るがないと判断したのか長い睫毛でその眼を伏せた四季がようやくその声を響かせ条件の内容を口にした。




「では・・・・、今後・・・・何があっても秋光の生活だけは保障して頂けますか?」


「・・・本物の【愛】を条件に偽物の【愛】でその身を落とすのかよ?

ふっ・・・ずいぶんとお綺麗な事だな・・・・」



俺にはそれを与えないくせに・・・・。


皮肉っぽく返した言葉に寂しそうに俺を振り返っていた四季が口元に弧を描く。



「・・・・・それが・・・【愛】ですから」



もう・・・・たくさんだと【愛】を語る唇を塞ぐ。


契約成立の口付けに触れた瞬間から見事溺れた。