暴君と魔女





「何が・・・言いたい?」


「・・・っ・・・私の存在理由は・・・あくまで愛を諭す魔女。

愛を与え呪いを解くのは他の綺麗なお方にお求めください」




言うなり胸を押し返していたその繋がりでさえ外されて、俺が動揺で不動の合間に四季はその表情にいつもの笑顔を作りだす。


にっこりと微笑み今の事はまるでなかったように俺の腕から逃れ立ちあがる姿に、今まさに理解しそうだった物を打ち砕かれる。




俺に【愛】を語るくせに・・・・。


それを求めようとすればスルリと逃げる。



悪戯に刺激し翻弄するのは魔女の性分。






だけど・・・もう、その手には乗れないんだ。





離れようとする後ろ姿に手を伸ばす。


指先でその体の熱を捉えたと感じて引き寄せ腕の中に引き戻した。


胸に触れる四季の背中とその熱にグラリと揺れそうなほどのぼせてしまう。


そしてその頼りない肩に頭を預け、丁度口元近くにあった耳に直接渇望を囁く。




「抱かせろ・・・・・」




その一言が何か鋭利な刃物であるかのように、その身動きをやめる四季がごくりと息を飲むのを感じてしまった。


そして密着するがゆえに分かる四季の鼓動。


明らかに平常でない早さでリズムを刻むそれに自分の鼓動も引きずられ早くなってしまう。



「・・・っ・・・望様・・・何を・・」


「下手な誤魔化しは口にするな・・・・・、お前がどう返事をしようがもう限界だ」



泣こうが、喚こうが・・・・、


憎まれ嫌われようが・・・・、



それが偽物だろうが・・・・・、





「擬似の愛でいい・・・・・、俺を求めろ・・・」




言った直後から胸が焼け落ちそうなほど熱く苦しい。


失わないように更に抱きしめていた手に力を込め、四季の細い首筋に唇で触れた。



「・・・っ・・」



か細い四季の吐息に反応し、指先で顔を自分の方へ誘導する。


完全なる抵抗を示さずこちらを振り返る様に俺と視線を絡めた表情に完全に制御不能になる。


困惑に揺れ動くグレーが綺麗だと思い、スッと顔を近づけ唇の重なりを求めていき。


まさに触れようとお互いの呼吸を唇で感じた瞬間の魔女の呪い。