暴君と魔女










「違います・・・・・・」









耳に響く魔女の声。


いや・・・セイレーンの声。




その声に見事意識を引かれ、視界に光を取り戻す。


捉えた姿は相変わらずその考えを決して見せない無に近い姿で、その胸に拾い集めた写真を抱き床に膝をついたまま俺をまっすぐに射抜いてくる。


その眼をなんとか見つめ返し、まだ感情収まらない口調で四季の言葉に疑問を返す。



「何が言いたい・・・・」


「・・・・・・・・私の仕事は・・・・利益を出す事です」


「・・・・・・そうだ、・・・だからそのーー」


「【望様】の利益を出す事です」



凛と響いた声に騒いでいた心臓が止まった気がした。


痛いくらいに寄っていた眉根がスッと離れ、苦悶の表情が驚きに変わる。


俺がその姿をコロコロと変えている間も決して揺らがない四季が、スッと立ち上がりゆっくりと俺の前に歩み寄る。


足音もなく白い裾を揺らし目の前に立つとすぐに目線を俺より下に動かして。


ソファーではなく床にその身を置くと俺の膝にその写真の束をそっと乗せた。



「・・・・・この中には・・・いないです」


「・・・・四季?」


「この中の女性には・・・・望様を本当の意味で解放して安堵を与えてくれる様な方はいないです」


「・・・っ・・お前何言って・・・」


「私は【望様】が少しでもその鎖から解放されるのが利益だと思っています。だから・・・・そうじゃない命令は受けれません・・・。

もし・・・それが癇に障るのであればどうぞ解雇してくださいませ」



四季の言葉が頭に反響する。


茫然と固まり俺を見上げる姿をただ何も考えずに見つめてしまう。


ただ、もし何かを思っていたとしたら・・・それは・・・。






酷く綺麗な・・・グレーだという事。










「・・・・・・馬鹿女」





口から衝いて出た言葉。


それにようやく四季がその表情にらしさを映し苦笑いを浮かべる。