暴君と魔女





「今日は個人的な先見を頼む」


「珍しい。封筒でお持ちになるなんて、それに個人的なって・・・・」



封筒を外観から確認し、ゆっくり封を開け中身をスッと取りだした四季が口元に弧を描いたまま一瞬止まる。


さぁ、どう反応する?


そんな感じに声をかけずにその姿のその後の反応を待ってしまう。


言葉を途中で途切れさせている事も忘れている様に固まる四季の手には何冊かの綺麗に装丁された写真があり、それは説明しなくても意味は充分に伝わったらしい。


ようやくフリーズが解けたらしい四季が再び口元の弧を強めるとそれを完全に引き出し中身を確認する。



「・・・・これを・・・先見しろと?どの方が望様に相応しく利益を得るか・・・・」


「・・・・そうだ。俺に相応しい・・・この家に相応しい相手を間違いなく選ばなければいけないからな」



家の為に間違いのない婚姻を。


その判断を委ねようと四季にその選択史を提示する。


俺の言葉に特に動揺するでもなく頬笑みその写真に写る数人の女たちを眺め指先で触れる四季。


なんなんだよ・・・・・イライラする。


特に反感を買う様な発言も態度もしていないというのに、四季の穏やかに頬笑みそれを見つめる姿に苛立つ感情が胸に渦巻く。


さすがに横暴なそれは目立って外に出さず、それでも収まらないそれに声ばかりはぶっきらぼうに響かせてしまった。



「黙るなよ」


「すみません。・・・・責任が重大なもので真剣に読んでおりました」


「ふっ・・・責任な。まぁ、万が一外れても、相手を取りかえるだけの話だ。そこまで気を入れて読まなくてもいい」



頼んだくせに矛盾した答えを告げると、いつもなら反論してきそうな四季が小さく口から笑いを零し振り幅小さく横に首を振る。



「いいえ・・・・、望様の呪いを解ける様な愛のある方でないと」




言葉が落とされた瞬間に全身にざわりと鳥肌が立つ。


歓喜か悲哀か・・・・。


だとしたら何に歓喜し何に悲哀を感じたのか・・・・。


痛い・・・・・、苦しい・・・・・。


徐々に心音が耳触りになってくるのに眉根を寄せ、その眼に捉えている四季の姿に苛立ちが募る。


自分には関係ないのだと感情的にもならずにただ手元の写真に視線を落とし、グレーの眼差しが俺の未来を選ぼうとしてくる。