暴君と魔女





「いつまでも笑ってんじゃねぇよ・・・・」


「だ、だって・・・望様の口からファンタジーとかまず出てこない言葉じゃないですか」


「お前と関わってなきゃ一生言わなかったかもしれんな」


「じゃあ、感謝してくださいませ」


「あっ?」



何言ってるんだこの女は。


そんな含みを込め感じ悪く返事をし横目で見れば、ドキリと心臓が跳ね緊張した。


グレーの眼を長い睫毛で半分隠し口元に程よい弧を描いた四季が俺を諭す。



「知らないで終わるより・・・・使わなくても知っている方が人生経験として優れていると言えるでしょう?」




ああ、この女・・・・。


本当にいちいち癇に障る。


俺が反論出来ない様な答えをさらりと言うんだ。




四季の言葉に見事言い包められ、それでも悔しさから舌打ちで誤魔化すと四季は小さくクスリと笑う。


それがまたどこか余裕を持って俺に接している感じがして面白くない。


どっかの女神もこの魔女も、へらへらしている癖に肝心なところで俺を封じる。


ある意味似ている女たちなのかもしれないとどこかで思い、マジマジとその姿を確認してしまう。


相変わらず白いナイトウェアに身を包み、長い色素の薄い細い髪。


小柄な体に白い肌、子供とも大人とも区別しにくいその顔を特に印象づかせる長い睫毛の下のグレーアイ。


その視線と絡んだ今、少しばかり心臓に圧力がかかる。


そんな感情から逃げるように視線を下にすれば淡く彩られた薄紅の唇。


そう言えば・・・・四季にキスされていたんだったな。


思わず艶やかなそこに視線を止めて不動になると、不意に動き出した唇が魔力を帯びた声を響かせる。



「・・・望様?」


「・・・何だよ?」


「・・・いえ、お仕事を始めなくてもいいのですか?」



ふわりと微笑み確認の言葉を落としてくる四季にどこか軽く苛立ってしまう。


自分だって今の今まで忘れていたというのに、あんな風にキスしておいて何の意識も持たないのかと不満を抱く。


いや、意識されてもそれは困るか。


すぐにその答えがはじき出されたのは自分が手にしていた封筒の存在。


それを四季に差し出しながらその能力を示せと伝えていく。