暴君と魔女





「・・・・・あの子は・・・自由に産まれたから強気なだけなのよ」


「・・・・」


「・・・・・あの子があなたの立場で産まれてたら・・・・今こうして項垂れてたのはあの子でしょうね」



困ったように頬笑み語る女神見つめる。


落とされた言葉を反芻し、そうなんだろうか?と疑問に揺れる。


無い物ねだり。


それがそこにもあるんだろうか。



「望、従うんじゃなくて・・・いい様に利用しなさい」


「・・・・・」


「力を逆手にとって、もっと貪欲になりなさい」


「・・・あの男の様に?」


「あれは力を過信している馬鹿な例よ。眼先の利益しか見えていないからそれ以上の視界を開けない」


「・・・・・俺も同じような物です」


「そうかしら?少なくともあなたはこうして私の助言は聴くし、世話焼きな女の子と生活を共にも出来る。自分を恥じれるし、人間味があるわよ」



人間味がある。


それは・・・褒め言葉なんだろうか?


ずっとそれを捨てることでこの立場に耐えてきた俺に、まるで称賛するように微笑みながら口にするこの人。


そして徐々に軽くなる鎖に安堵してようやく息苦しさが薄れていく。


そう、昔から・・・・この人と話しているとその鎖の重さが軽減するんだ。


だから・・・・・この存在を拒めない。


深く息を吐き、ようやく元の自分に戻ろうと人格を再構築する。


その最中にクスクスと笑いながら俺の頭を子供にするようにくしゃくしゃと撫でる桐子さんに不愉快に視線を向けてしまう。



「あなたはよっぽど母親ごっこがしたいんですね」


「だって、私にはあなたはまだまだ可愛いお子様だもの。軌道修正出来る内はしてあげたいじゃない」


「・・・・・俺の周りは女神やら魔女やら厄介な女で溢れてるんだな」


「えっ?」



ぽつりと自分の現状に嘆いてみると、聞き取れなかったらしい桐子さんが覗きこんでくるのをさらりと交わす。


「いえ、」と軽く返事を返し不満を口にしている彼女に背中を向けた。


その裏で困った様に笑ってしまっていた自分をひた隠して。







俺の鎖を軽くする女神



それでも外すまでは至らない



女神でも外せないそれが



死ぬまでに外れる日が来るんだろうか?