「なーんか、がっかり~」
「そうですか」
「あんたならもっと賢く力を持ってこの頭の堅い大道寺の悪しき風習をぶち壊してくれるかと思ったのに」
「・・・・・・それを俺に期待するんですか?あなたでも出来なかった事を?」
呆れた視線で彼女を見上げると、勿論と言わんばかりににっこりと微笑み返され溜め息が出る。
本当、何を言い出すんだこの人は。
それこそあなたはその縛りが無いからこそ自由に動けて今の結果なくせに、俺は産まれた時から頑丈な鎖に繋がれて少しの間違いもない様に四方を針に覆われている。
今こうして少しの我儘が通るのだってそれなりの利益をあの父親に捧げているおかげなんだ。
今更・・・その圧力に対して反旗を翻す意思すら元から摘み取られているのに。
「俺に・・・自由はないんですよ桐子さん」
「でも・・・あなたはこの家系のトップにいる男なのよ。だからこそ・・・この家をぶち壊して立て直してよ」
スッとその眼に本気が孕んだのを見逃さない。
この女神の目的はいつだってこの家系を憎み破壊したいという願望。
本当、この人が男であったのなら・・・・確実にこの家は更に強大な物になっていたのだろうと思ってしまう。
そんな・・・・彼女が作る世界が見てみたかった。
だけど、無い物ねだり。
「ふっ、結局・・・自分の理想を叶えるために俺を駒にしようと目論んでいるわけですね。あなたも充分大道寺の悪しき存在の一部にすぎないんですよ」
皮肉交じりの言葉と笑顔。
それに対して女神は微笑むでもなくまっすぐに俺を見つめ、そして・・・・、
「・・・・そうよ?使える物を利用して何がいけないのかしら?」
響いた声に軽く鳥肌が立ち感動も覚える。
迷いなく、本心でさらりと言われた言葉。
ああ、俺も躊躇いなくこのセリフを言えたのであればどんなに良かったのか。
その時点で俺もこの人に敵わない存在なのだと思い知る。



