暴君と魔女





「やっぱり・・・魔女かセイレーンだ」



不覚にも逆転された不意打ちのキスに完全に打ちのめされたのは俺の方。


触れた唇にまだ余韻残る記憶が煩わしい。


なのに消えてほしくないとどこか深く奥の方で思い、自分の表面の意思と対峙する。


葛藤。


脱力しそのまま後ろに倒れ欲求だらけの体をベッドに沈める。


片手で視界を覆うように頭を抱えるともどかしい喉の奥からその言葉が弾きだされた。




「・・・・・・抱きてぇ・・・・」




ああ、おかしくなっている。


あの女に出会って傍にいる間にどんどんと呪いの効力が強まって。


呆れ下げずんでいた筈の存在が徐々にその色を変え始めている。


あの女とは根本から交わる世界ではないというのに。


そう色彩で言えば真っ黒な俺に対して、あの纏っている印象深い白な四季。


あの色を塗りつぶしてやろうと試みるのに決して微塵も色を濁さないあの存在がもどかしくて、どうしてやろうかと躍起になっている。


ああ、それだ。


俺が四季に執着するのは恋や愛ではなく・・・支配欲。


どうにも思い通りにならない、下手したら今の様に俺を翻弄する彼女に惑わされているだけ。


自分で筋が通り納得できる答えを導くと、ようやく闇を落としていた視界をクリアにした。


そうだ・・・・あいつはその能力を利用したくて俺が買ったに過ぎない女。


仮に愛や恋で感情が揺れようと身分もそぐわないあいつと永遠が続くわけでもない。


絶対に・・・・認められる筈がない。


俺の隣に並ぶべき女はいつだって用意されている同じような作り物の完璧な女。



「・・・・・・潮時か」



逃げ続けていたそれと向き合うタイミングなのかもしれないと結論が出て、それでも乗り切れないそれに深く息を吐くとようやく肌寒さに気がつき体を起こした。