暴君と魔女





いや、俺だって本気でその為に口にしたわけじゃないが・・・。


「何だよ・・・その全力否定は」


「の、望様とはあり得ません!!」


「あっ?それはあり得ない程俺とは不快ってことか?」


「まさかっ・・・、いえ、そう認知されていた方が間違いにもそうならないですかね?」


「知るかっ!」



だからどうしてお前はそう最後は謎かけ風に終わらせるんだよ。


苛立って落ちていたシャツを四季に投げつけると、顔面にそれがふわりとかかった四季がワタワタとパニックになっているのを無視してバスルームに向かう。


本当に・・・。


何で俺あの女とヤる夢なんか見た?


シャワーのお湯を頭から浴び項垂れてみても夢と言う自分の意思ではどうにもならない部分での事。


結局は欲求不満なのだと無理矢理な結論をつけ、一通り嫌な汗や感情を流すとシャワーブースを後にする。


適当に水気をタオルで取り、腰にタオルを巻きつけ部屋に戻る。


うっかり、その存在は軽く忘れていた。


髪の毛を拭きながら寝室の携帯を取りに戻った瞬間に、捉えた姿に唖然として不動になる。



「・・・・・何がどうなったらそうなる?」



俺がシャワーに行ったのはせいぜい15分から20分。


当然四季は部屋に戻ったものだと思っていた。


なのに視界に入った姿はなぜかまだベッドの上で、しかもその体を横たわらせて目蓋を閉じている。


そして何故・・・・。


俺のシャツを抱いて眠っている?


すやすやと寝息を立てている四季の腕にはさっき俺が投げつけたシャツがしっかりと抱かれていて。


まるで子供が毛布を抱いて眠っているかのような光景。


だけど微笑ましいと言いにくいのは俺のベッドで俺のシャツをその手に眠っているからで。


どう受け取っていいのか分からないその光景を茫然と立ち尽くして見つめてしまった。


それでも体の寒気で正気に戻るとため息交じりにベッドに近づいてその姿を覗き込む。



「・・・・・・訳が分からない」



さっきは【あり得ない】と言い切ったくせに。


言う事やる事が全て理解できない女。