「で、その呪いがですね、王子が愛する事を知らない限り解けないもので。姿もお城もまわりの従者もすべて姿を変えられるんです」


「・・・・周りはいいとばっちりだな」


「望様」


「はいはい・・・」


「呪いを解くには王子が誰かを愛して、その相手からも愛される事が必要で。呪いがかかった時に魔女に渡された一輪のバラが散るまでにその相手と愛し合わないと一生呪いは解けないんです」


「はやっ、花の一生なめてんのかその話」


「望様・・・、童話に現実的なもの練り込んだら駄目ですよ。魔法のバラなんです」


「知るか。童話なんて読んだ事ないしな」



そう告げて、聞いておきながら興味が無いという様にケーキを口に運ぶと、仕方ないといいたげに紅茶を口に含んで呑みこんだ四季が溜め息をつく。



「やっぱり、その王子様っぽいですよ望様は」


「だいたい、どんな呪いだよそれ。何に姿を変えられたんだ?」


「野獣です」


「やっぱ殺されたいか?」


「ピッタリじゃないですか」


「黙らないとまた口ふさぐか?」



ニッと笑いそう告げればビクリとした四季が両手で口元を押さえると無言で首を横に振る。


なんか少しムカつくな。


俺とはキスしたくないって事かこの馬鹿女。


する気はなかったもののその反応にムスッとしてケーキを口に運ぶと、自分の危険予測は不必要だったと理解してようやく手を外す四季。



「ふぅ、望様と一緒にいるとなかなかスリリングな毎日を送ります」


「それはこっちのセリフだ馬鹿女」


「私はいつだって望様に従順じゃないですか」


「どの口がそれを言うか・・・・」


「私は望様の言う事に最終的には従っているじゃないですか」


「言われたらすぐに実行しろよ」


「ふふ、では、以後気をつけます」



俺の【命令】に含み笑いでそう切り返し視線を俺の空のカップに移すとティーポットを手にする四季。


ふわり風に舞う細い髪の毛が月明かりで透き通って幻想的に見える。


魔女・・・・。


月の魔女の様だ・・・・・。



「四季・・・・」


「はい・・・望様」



お茶を注ぎながら声だけ返したその返事に、少しのもどかしさで目を細める。


その視線も・・・よこせ・・・。