「っ・・・マジに、止まれ!!馬鹿女!!」
「止まりません!!」
「命令だ!!」
「もう上司じゃありません!!」
「勝手な契約破棄は受理してねぇ!!」
「・・・っ・・・ち、痴漢ーーー!!」
「・・・・ぶっ殺すぞ」
まさかの苦し紛れの四季の声に、一瞬周りを気にして視線を走らせる。
しかし雪に満ちたそこに人の気配はまるでなくて、内申ホッとすれば一気に集中は逃げる四季にと移っていく。
相変わらず・・・足が速い。
こんな足場の悪い中でよくこんなに走れるものだと思うほど。
だけど頼むから走らないでくれ。
さっきから働く動揺や不安は四季が転ばないかと抱く物で。
よろめく姿を見るたびに心臓に何か打ち込まれる様な衝撃に耐えられなくなってきている。
馬鹿だ馬鹿だと思ってきたが・・・・、
この・・・・、大馬鹿。
「俺を嫌いでいいから、・・っ拒んでもいいから止まれっ!!」
走っていた足を止め、息も絶え絶えに全力でその声を響かせる。
コレで逃げられたら・・・きっとそれも運命なのだと。
四季は俺の傍にはいない女なのだとどこかで区切ろうとした決意。
だからこそ全力で弾きだした声が自分の中で反響し、今までの疲労もたまって目蓋を閉じ天を仰ぐ。
頬に舞い落ちてくる雪が熱くなった肌に溶かされて。
触れた瞬間に熱いと感じるほどの冷たさを何度か感じてから目蓋を開く。
登っていく感覚。
凄い・・・な。
小さく口元に弧を描きゆっくりとその視線を降ろしていく。
きっと目の前には白銀の世界だけが広がるのかと思っていた。
だから、軽い衝撃。
それを望んだのは自分のくせに、いざそれをされると混乱した。
降り続く雪の遮りの向こうで肩を揺らしながら呼吸を整えこちらを振り向いて立っている四季の姿。
それでも少し距離のあるその姿が複雑な表情で俺を見つめ不動になる。
ああ、本当に・・・・四季だ。
「・・・・・なんだよ?」
「・・・・・呼びとめたのは・・・・望様です」
あまりにもの言いたげに見つめてくるから思わず口にした言葉。
そうして切り返された言葉に、そうだった。と小さく笑う。



