記憶の回想。
閉じていた目蓋を開けばあの日の様なグレーの空と冷たい空気に眉根が寄った。
2度目の冬。
それも・・・・、ロスよりもさらに体感寒く感じるここは・・・。
「あ、いたいた。お待たせ~」
ようやく待ち人来たりとベンチの背もたれから体を起こすと、長い髪をなびかせこっちに手を振りながら歩いてくる姿。
それにあからさまな不満を表情に浮かべて立ち上がると、遊んでいた秋光がその姿に駆け寄っていく。
「随分な遅刻ですよ」
「あはは、ごめんなさい。子供達が可愛らしくて」
そう言ったのは満面の笑みの桐子さんで、仕事で飛んだ日本に付き合わされてこの極寒。
仕事の合間に孫の顔を見に行っていたこの時間。
こうして戻ってくればイキイキとし、若返ったようにはつらつとした姿に苦笑いを浮かべる。
「楽しかったですか?【おばあちゃん】」
「ちょっ、やめてその呼び方!」
「秋光~、僕も【おばあちゃん】いなくて寂しかったぁ。って言っていいぞ」
「分かった、分かったわよ。遅くなった事謝るしご馳走するから」
子供の様に頬を膨らませそう切り返した姿に勝ち誇ってニヤリと笑う。
確かに今も衰えないこの姿をおばあちゃんと言われるのは癪なんだろうな。
そんな事を考えて周りの景色を何の気なしに見つめていれば秋光を抱き上げた桐子さんが含みある感じに俺を見つめた。
「どう?久々の日本は」
「・・・・・相変わらずあまり好きになれないです。無駄に暑かったり寒かったり、動く人ものんびりしてる」
「日本のいいところでもあるわよ。あっちは逆にせかせかしすぎなの」
「仕事に関してはロスの方がしやすいでしょう」
「育児や子育てなら日本が安心よぉ。秋光の為にも日本にしばらく滞在したらどう?」
「・・・・あいつがいる土地に滞在なんて拷問ですか?」
暗に示した存在は桐子さんも理解しての嫌味な会話。
くっくっくっと笑う姿でやっぱりからかっているのだと理解して舌打ちをする。



