薄暗い部屋でぼんやりとそれを見降ろした。
無駄に大きすぎるベッドの真ん中で小さな寝息を立てて眠る姿。
その手に握られているすでによれよれの紙飛行機に視線が止まり、二機あるそれは一つは俺が作った物。
もう一つは、飛ぶというよりは落ちる為に作られた様な四季の紙飛行機。
それを無感情で見降ろし、ただ、そんな事もあったなと記憶の回想中に隣に並ぶ気配。
視線を向ける必要もなく分かる姿がしばらく同じように秋光を見降ろした後に声を響かせる。
「・・・・おかえりなさい」
「・・・・」
「ちょっとばかし・・・・非行的でないかとママは不安でならないんだけど?」
「・・・・・母親じゃあないでしょう?」
「似たようなものよ」
家族ごっこ。
とは、貶せずに押し黙る。
もう、前の様にこの人を貶せなくなっていて、その裏にあるのは・・・。
同類。
状況も意味も違うのだろうけれど、お互いに今も得られない存在を求めて苦しんでいる。
それを誤魔化す方法が俺は仕事で、この人もそうだったのだろうと気がついた。
そして、・・・・俺との擬似的な家族ごっこ。
「・・・・・どんな・・・気分ですか?」
「・・・・・なにが?」
「・・・・愛した人と・・・・その子供を置いて孤独に生きるのは」
不意に息遣いが変わった気がする。
お互いに視線は絡めず、暗い部屋で声だけの探り合い。
それでもその闇がこの会話を後押ししているのかもしれない。
表情を隠してくれるから、陽の当るところでは聞きにくかった本音を聞きだせるかと口にする。
知りたかった理由、
どこか・・・・・・四季と類似する生き方を選んだ彼女の本心が気になったから。
でも濁して誤魔化されるのかと思う。
決して人に語る様な話でもなく、聞いたくせに無粋だとその場を去ろうかと僅かに動いた。
瞬間、
「・・・・・傍にいたのも愛なら・・・離れたのも愛よ」
「・・・・」
「それでも・・・・記憶したぬくもりが欲しくて類似する関係を求めてしまうのね」
すでに後ろに一歩踏み出していた体をゆっくりと捻り振り返れば、薄暗闇でもその視線が絡んだのを気づく。
その口元は弧を描いているのに感じるのは悲哀。



