暴君と魔女







“あなたに作ってもらうんだって、紙の束用意して眠いの我慢して待ってたわよ”



非難する声の響きが不協和音の様に頭に響き、耳触りだと頭を抱える。


煩わしいとその声に終止符を打つようになんとか声を返せば、、




「・・・約束なんてしてない」


“・・・・・あの子の気持ちも汲んであげなさいよ”




やめろ・・・・。


その続きは聞きたくない。


更に致命傷を与える様な毒を流され、この後に来るであろう痛みに身構えて怯える。


遠ざけていた存在、記憶、・・・・その大きさを知らしめる痛み。




“父親を失って、すぐに四季ちゃんもいなくなったあの子が今ーーー”


「黙れーーーー」



深く、暗い闇から絞り出した様な低い声。


まるで自分に害をなす存在に殺意を交えた様な声に、自分でも動揺し鼓動が早まる。


きっとそれを察したであろう女神の溜め息が俺を非難しているのか憐れんでいるのか。



“・・・・・あの子は本当に子供なのよ。子供じみた大人のあなたと違って寂しさを誤魔化す方法なんて知らないの”



ああ、前者か。


俺以上に傷ついていると言いたいのか、俺の気持ちを軽んじたような言動に若干の憤り。


それによってのそれこそ子供の様な切り返し。



「・・・知りません。・・・・アレは、四季が無責任にも置き去りにした子供にすぎない。面倒を見ているだけ情がある方でしょう?」



淡々と口にした言葉に自分でも呆れ、電話先の女神の無言が突き刺さって痛い。


しばらくの沈黙の後に短く返されたのは、




“・・・・帰ってきなさい”




その一言で切られた通話に僅かに落胆を感じ取ってしまう。


どうでもいいと切り捨てた自分に同じようにその感情を乗せて返してきた女神。


ああ、怒っているのだろうな。と、どこかで思い、だけどすぐに忘れてしまった。


そんな事よりも今も動悸が走る自分の感情。


それを確かめるように掌を見つめ思う。


俺は・・・・・・そう、僅かであっても・・・・、






四季を恨んでいるのか?