暴君と魔女







思わず半開きになった口から言葉すら出てこず、ただ呆れた視線の身が女神を非難すると。



「・・・頑なだけど・・・・愛は愛よ」


「は?」


「あんたが今までの捻た愛情でなく真正面から動けば・・・・、もしかしたら彼女も引きずられるかも」


「捻たって・・」


「言葉遊びや裏返しの愛情じゃなくて、・・・・感情のまま素直に口にしてみたら?必死な感情からの言葉は相手の嘘にヒビを入れる」



あっ・・・・。


ストンと、心にハマったその言葉。


すんなり受け入れられたのは朝の四季の反応。


感情のまま、悲痛な思いを口にした瞬間に垣間見せた四季の素顔。


納得したのは表情にも表れていたらしく、確認した桐子さんがクスリと笑うとデスクから降りた。


カツンとヒールの響く音にその姿に視線を向けると、鞄を手にして歩き始める後ろ姿。




「・・っ・・桐子さん」


「ん~?」




何?と振り返り微笑む姿に込み上げていた言葉が途中で引っ掛かった。


喉もとでもどかしく存在するそれを吐きだしたいのにそれを躊躇い、結局他の言葉でそれを掻き消す。




「・・・・勝手に家に入らないでください」


「あらぁ、どこの母親も息子の部屋を密かに粗捜しするものよ」




勝ち誇ったように笑う姿に不愉快を示すと、軽い笑いを響かせその姿は扉の向こうに消えていく。



「だから・・・息子じゃねぇよ」



そんな悪態をついて軽く浮かしていた腰を椅子に落ち着かせると深く息を吐いた。


そして反芻する女神のご託宣。



「素直に・・・ね」



それは酷く難しい事だと苦笑いしか浮かばない。


それでも・・・・一番効果がある物だ。


仕方ない・・・・・。








陳腐で浅はかで馬鹿みたいだけれど、




恋に溺れて行動してみようか。






そう結論づいた瞬間に、どっかのグリーンアイの姿を思い出し小さく笑う。


今なら・・・言っていた事を理解できそうだと思ったから。


そして今なら大きく尊敬するよ。


素直にひたむきに感情を口にしていた姿を。


少し軽くなった感情で背もたれに体重を預けて天井を仰ぐ。


そうして零れた僅かな感情。



「・・・・ありがとう」



さっき飲み込んだ・・・・女神への謝礼。