暴君と魔女






「【恋】・・ね、名目をつけると随分安く感じますね」


「まぁ、滅多に口にする物でもないし、あなたには無縁の物だったでしょ?」



クスクスと笑う叔母が酷く意地悪に口の端をあげ目を細める。


それに冷めた視線で応戦すると、そろそろ本題に移行しようと息を吐く。


どう・・・切りだしたものか?


聞きたい事は一つだというのに、それに付属する面倒な厄介事の多い事。


四季が何をどこまでこの人に話したのか。


この人が四季の何をどこまで理解しているのか。


探る様に椅子から目線の上の叔母を見上げると、気がついた彼女が含みたっぷりに微笑んで仕掛けてきた。



「望?下手な探り合いするよりストレートに聞いたらどう?」


「・・・・・それをするには色々と悩む事が多いんです」


「悩み?ああ、例えば・・・・・、四季ちゃんの第3の眼・・・とか?」


「・・っ・・・・・、馬鹿女」


「あら、酷いわね。叔母を捕まえて」


「違います。四季の事ですよ」




やっぱりその事もこの女神に打ち明けてしまっていたかと頭を抱える。


そんなこの人の興味を一心に引きそうな四季の能力。


決して知られたくなかった事の一つでもあったのに。


多分それを理解している桐子さんが俺の項垂れた姿に満足そうに声を響かせ更に俺を追い詰める。




「なかなか面白い力よねぇ」


「・・・・まぁ、」


「どおりで最近のあなたの実績に曇りがないわけだわ」


「・・・元々実力は備わってますが?」


「そうね、でも・・・・前みたいな小さな揺らぎもない。確実なる実績よね」



ああ、性質の悪い女神め。


思ったとおり四季の力に興味津々で、それを利用していた俺に意地の悪い言葉を続ける。


本来こんな話がしたいわけでもなく、もっと言えば早く本題について触れたいんだ。


ようやく話の切り替えができるとその浮かんだ意思を言葉にするべく口を開くと。




「俺が知りたいのは・・・、そんな特殊な四季の能力についてでなく。あなたと同じ女としての四季の感情です」



はっきりその声を響かせて余計な話はいらないと告げれば、一瞬驚きを垣間見せた叔母が方眉を下げて小さく笑った。