暴君と魔女






“・・・あなたが私に連絡するなんて、よっぽどの用事なんでしょ?”


「・・・・・そう言っていいのか、ただ・・・なんとなく答えに近い鍵をあなたなら手に入れているんじゃないかと」



ふぅん。と、正解とも不正解とも分からない声を響かせた女神が少し考え込むよな間をあけて。


その間でさえも悪戯に俺を翻弄しているのかと僅かに苛立つ。


やはり、この人に頼るのは間違いだっただろうか?


そんな後悔も見え隠れし始めた瞬間に提示された言葉。



“これからオフィスに行くわ”


「はっ?」


“電話じゃ表情読めなくてつまらないし。電話で話す様な事じゃない気もするから”



電話で話す様な?


単純に答えのみを引き出そうとしていた自分にはどこか衝撃的な言葉で押し黙ると、お構いなしに「あとでね」と言って通話を終える叔母。


一方的な。と、いつもなら思ったかのしれないけれど、よく考えればあの四季が頑なな態度を取る理由に重みがあるのは当然かもしれないと納得する。


つまり・・・・あの叔母には何か打ち明けているのだろうか?


俺には言わないのに?




「っ・・・くそっ、ムカつくな」



ポツリ不満を口にして、通話の終えた携帯をポケットに突っ込むと家を後にした。


今は心を閉ざしている四季にどう食いつこうと無駄だと理解して、焦燥感は否めないけれどそれを解決する遠回りに今は向かう。


本当に・・・面倒な女だ。


車の中でも思い出しては舌打ちし、そして更に追って思いだす今までの四季の甘さに胸が締め付けられる。


なんて・・・・面倒な感情だ。


焦って、苛立って、苦しくなって、


自分に快楽を与えてくれるのはその感情に埋もれた小さな輝きににしか過ぎないのに。


その些細な甘さが強烈で後引く味に依存する。


どんなに苦しいと思っても、どうしても欲しいと渇望する。


これが・・・・




















「それが【恋】ね」



女神が頬笑み俺の複雑な感情に名目をつけた。


陳腐な言い方をすれば。と、笑いながら付けたし、人のデスクに腰掛けながら俺を見つめた。