暴君と魔女





「・・・・気持ち悪い・・」




これだったら、昨日のあからさまな拒絶の方がまだマシだと思うほどの嫌悪。


狂おしいほど好意を持った存在へ感じる嫌悪の心に、抵抗して反発する負荷で立てなくなりそうだ。




嫌いたくない。


失いたくないんだ。


一度得た、・・・何とも言えない生温いくせに心地いい感情を。





一度混じった白に憧れて・・・・


もうただの黒に戻れない。




なのに求めても拒まれるそれに、今まで忘れかけていた重みに一気に引きずられた。




「・・・・・・苦しい・・・」




自分の体に巻きついた忌まわしい呪いの様な鎖。


その重みを緩和して忘れさせていた筈の存在が急にその鎖を明確に思い出させる。


なのに・・・・愚かにも、


掻き消せずにまだ信じてしまう・・・・。


その存在が拒んでも、


この呪いを解くのは・・・・四季だけだと。






どうしたら・・・・・、



魔女の愛を得られる?







扉の向こうの彼女の心を・・・・、


理解できない俺は


まだ呪いは解けないのだと言われたようだ。





しばらく不動でカオスに浸り、それでも力なく立ち上がるとゆっくりと歩きだす。


こうしてても動く日常。


立ち止まっても何も変わらないと知っている。


何事も・・・・自ら動かなければ動かないんだ。


そう判断した心の内は諦めではない。


むしろ・・・・思いだした築き上げた時間の記憶。


たかが昨日からの数時間。


それ以上の時間の記憶には取るに足らないものじゃないか。


昨日のあの瞬間までは確実に四季は四季のままだったんだ。


あの不器用な女がそう簡単に自分を変えられる筈がないと気がついたのはさっきの一瞬の表情。



「よく・・・・分からんが・・・」



俺が家系の重圧で縛られているというのなら・・・。


四季にも何か見えない鎖が巻きついているのだろうか?


あんな風に・・・本来の自分を殺してまで?