暴君と魔女






「・・っ・・・・・分からない」


「・・・望様?」


「お前が何を思っているのか全く読めなくて・・・、俺自身を見失うっ・・・・」


「・・・っ・・」




あっ・・・・、


・・・四季・・・だ。


思わず苦しさのまま表情に表し絞り出すように告げた言葉に初めて四季の表情が崩れた。


揺れ動いたグレーはいつもの瞳で、


怯んだ表情は本当の・・・俺の知ってる四季だと思う。


だけどすぐにその表情を飲み込み、偽善的な頬笑みを浮かべる姿に落胆した瞬間に響く声。





「私は・・・・望様に利益をもたらす魔女という名の道具なのですよ」





思わず言葉を失えば、そっと頬に伸びた四季の指先に嫌悪が走る。





「望様の幸せを・・・・確かなものに助言して導くのが私の仕事で存在理由なのです」





偽善的聖母の頬笑み。


こんな真似は・・・・お前には出来ないと思っていた。


しないでいてほしかった。


他の愚かしい女と同じような表面ばかりの偽善なんて。


頬に触れていた四季の手を払いのけると、勢い任せに唇を重ねる。


しっかり重なったというのになじまない感触に気持ちが反映さえて。


拒みはしないのに受け入れもしない四季の反応に少しずつ心を殺されているようだ。




「・・・・四季・・」


「望様・・・・、お抱きになりますか?」




見上げる表情に嫌悪して、そう思ってしまう自分が苦しくて痛くて惨めだ。


誘う様に胸元に手を添えてきた四季からスッと離れるとそのまま入口に歩きだす。




「望様・・・・」




凛と響く声に足を止め、ここまでの仕打ちをされていてまだ期待する心は愚かだ。


それでも期待して振り返ってしまう。




「いってらっしゃいませ」




いとも簡単に裏切られたとしても。


不自然に感じる四季の頬笑みに完全に酔って怯んで逃げるように部屋を出る。


パタリと扉が閉まった瞬間にそれに寄りかかり、あまりの気持ち悪さに目を閉じ力が抜けた。