暴君と魔女






久しぶりに眠れない夜を過ごした。


いつまでも耳に残る四季の悲鳴のような叫びと拒絶する様な反応がずっと体を蝕んで。


鮮明に思い出すたびにズキリと痛む。




「・・・・・厄介な感情だな」




心に反した笑みを口元に浮かべ、自分の情けない姿に嘲笑を漏らした。


四季は今日も・・・・俺を拒絶するのだろうか?


浮かんだ不安に顔を合わせるのが恐いと感じ、それでも淡い期待が後押ししてきて、ふらりとベッドから立ち上がるといつもの通りに支度を整え部屋を出る。












「おはようございます望様」


「・・・・・・・おはよう」



思わず普通に反応を返して驚きに不動になる。


躊躇いながらも四季の部屋をノックしいつもの様に返事を待たずに扉を開ければ、捉えた姿がこちらを振り返りグレーが絡むとドキリとした。


だけど瞬時に柔らかく微笑む四季の姿。


そして向けられたいつもの様な笑顔に呆気に取られ不動になれば、クスクスと笑う四季がキッチンに向かいながら声を響かせる。



「どうされました?まだ夢からお覚めになりませんか?」




夢?


ああ、もしかして昨日のアレは夢だったんだろうか?


一瞬本気でそんな事を思うもすぐにそんな筈はないと判断し、ようやくその足を動かすと四季の傍に近づいていく。


四季といえばキッチンで香りのいい紅茶をポットから注いでいる所で、横顔と耳に揺れるイヤリングに意識が移る。


その口元は小さく弧を描いていて、いつも通りの雰囲気に昨日ほどの緊張は薄れ声をかけていく。




「・・・・・四季、おまーー」


「望様、今日の紅茶はとても香りがいいんですよ」




偶然なのか、俺の声にかぶせられた他愛のない言葉に疑問を感じるのに変わらず微笑む四季に悪意が見えず。


差し出された紅茶を受け取ると口に運ぶ。