暴君と魔女





理由すら語らず、俺との接触は全身で拒絶する今。


何も出来ずに静寂だけが時間を刻む。


どのくらい不動でそうしていたのか。


ただ、風が鬱陶しいと感じ始めていた時に、不動だった四季がその体をのそりと持ちあげ。


力なく表情の無い姿でどこでもない空間を見つめてからすっと立ち上がる。


生気のない瞳で、さっきの騒ぎで僅かに崩れた髪が頬に落ちる。


あまりに様変わりした姿や雰囲気に言葉を失いただ見つめていれば。



「・・・・・・・・取りみだして・・・・・申し訳ありませんでした」


「・・・・・・・・四ーー」


「・・・・・今夜は・・・・・休暇を頂きます」


「っ・・おいっ・・・・」



横をすり抜けようとする四季の肩を掴もうと、手を伸ばして空を掴む。


スッと無言で交わされて、振り返った四季の感情を表さないグレーにゾクリと鳥肌が立った。



「・・・・・・・おやすみなさいませ、望様」



俺の意思など、疑問など関係ないとその身を部屋に戻していく四季が、振り返る事なく寝室の扉に消えていく。


理由が・・・・・全く分からない。


何故、四季が取りみだしたのか。


何故、感情を表さなくなったのか。


何故・・・・・・・、俺を拒絶する?



「・・・っクソ・・・・」



言い様のない葛藤で体が占められ、もどかしさで胸が痛む。


強引に四季を追い詰めるのは容易い事だ。


それなのにそれすらも抵抗を感じる四季の反応。


また、あんな風に拒絶されるのが酷く恐いと思う俺は、随分情けない男になった物だと息を吐く。


それでも・・・・・・・、女々しいのだろうか。


夜風を遮るように硝子戸を閉める。


ゆっくりと視線を寝室の扉に移し、ズキリと痛む胸をごまかして歩み始めた。


一歩一歩緊張しながら扉の前に立ち、躊躇ってから軽くその扉を叩いて声を響かせる。



「・・・・・戻るぞ」



当然の事ながら返事のない四季に落胆し心が折れそうな感覚になんとか耐えると。



「・・・っ・・・・おや・・すみ」



精一杯の響き。


その声が、心が届いているかは分からないけれど、反応のない時間に諦めて、その身を返すと部屋を横切り入口に向かった。


女々しく振り返り寝室の扉を見つめ、不動なそれに溜め息をつくと部屋の明かりを落として暗い廊下に歩き出した。