暴君と魔女






さすがに・・・・・この反応はおかしい。


不安が伝染し、少しでも理解しようと四季に手を伸ばした瞬間。




「っーー嫌っ!!触らないで!!」




四季の大声を、心から悲痛な声を初めて聞いた気がする。


触れようとする俺の手を見つめ、心底怯えた様に壁に張り付く姿に混乱が走ってまともに頭が働かない。


何が起こったか理解できない。


だって、今の今までその距離は無いと言っていいほど触れ合って、少なくとも四季の好意は感じていた。


なのに、突然の拒絶。


それも、絶対的な拒絶には恐怖すら見え隠れする。


意味が・・・・分からない。



「・・・っ・・・・・、私・・・・失礼します」



スッと俺に触れないように横からすり抜けようとする四季に、ようやくフリーズの解けた体が咄嗟に反応し腕を掴み。


だけど瞬間的に耳に響く四季の悲鳴に近い声。



「っ・・嫌ぁぁぁ!!触らないでっ、離してっ、

・・・・・・・・・・っ、私を見ないで!!」



取りみだすように掴まれた腕を振りほどこうとする四季に、混乱し動揺するのにその手は離せず。


むしろ更にしっかりと掴んで引き戻せばガクンと下に落ちる体重に腕が痛んだ。


思わずその手を離せば、音もなくクシャリと床に沈む四季の体とか細く響くすすり泣き。


ふわりとさっきまで心地よかった風が今は不穏な空気を送り込んできているようで煩わしい。


そして気がつく。


前も・・・・似たような事があったと。


泣き崩れる四季に対し、何もできずにたたずんでいた記憶。


あの時と類似する時間に思わずその身をかがめ、あの時の様に手を伸ばす。



「・・・・・触らないで」



触れる直前に、それを分かっている様に響く拒絶の言葉にその手が止まる。


引っ込みのつかない手がその場で留まり、全くその顔を見せない四季に胸が痛む。



「・・・・・・っ・・・四季?」



どうしようもなくなりその声を響かせれば、聞きたくないと耳を塞ぐ姿に言い様のない落胆。



完全なる拒絶。