暴君と魔女







「・・・・・・望様、・・・・お仕事はよろしいのですか?」



腕の中から控えめに問われた事に、正しい答えを返せば仕事はある。


だけど・・・。



「今日は・・・・先見の仕事はいい」


「・・・・・お休み・・・ですか?」


「そっちより・・・・、後者の仕事に集中させろ」


「・・っ・・・」



意味を分かったらしい四季が息を飲む。


緊張の走った体が僅かに強張るのに、もう何度も繰り返した時間を感じさせない四季の反応。


それすらも愛おしくて手を添えていない方の頬に口付けると四季の指先がシャツを掴む。


耳に近い位置で響く吐息に徐々に欲も高まって、頬から唇に移動し始まった重なりでその呼吸を貪り熱を絡めた。


ゆっくりと後退した四季の体が壁に当たり、挟むように体を押し付け熱っぽい行為を繰り返す。


高まる熱と逆に涼しい風が吹き抜けるのが不思議な感覚で。


風にふわりと舞う四季の髪が頬をくすぐる。


誘惑する様なそれに唇を首筋に移していくと、軽く身悶えながらもしっかり俺にしがみつくように受け入れる四季。


そんな反応に満足して愛撫を繰り返していれば、



「・・・っ・・・・・」


「・・・・・望様?」



ズキリと痛んだ腕に思わず唇を離し、眉根を寄せた顔を四季が覗きこんだ。


俺を受け入れるように徐々に体に添わせていた四季の手が、昼間受けた傷の位置に触れ、瞬間的な予想外の痛みに反応してしまった。


すぐにその苦悶の表情は消したものの、四季の眼には不安が揺らぐ。


そして躊躇いながらその唇が、確認の言葉を響かせ始める。



「・・・・・・・望様・・・・、何か・・・怪我を?」


「・・・・・気にするな」


「・・っ・・・・しているんですね?!」


「どうって事じゃない。単にきちがいな勘違い女の報復を掠めただけだ」



面倒に思いながら説明し、騒ぐ様な出来事でないと告げようと視線を移し固まった。



「・・・・・四季?」



捉えた姿はいつもの様な笑みはない。


無表情でもなく、言葉を当てはめるなら畏怖。


驚愕し、畏怖した表情はみるみる青ざめて、さすがに異常な反応だと確認するように覗き込む。



「・・・・おい?四季?」


「・・っ・・・・」



名前を呼べば、まだ何か焦点の合わない様な酷く怯えた表情で俺を見つめる姿。


何か口にしようと唇を動かしているのに、そこからは音が響かず。


もう下がる事も出来ない壁際だというのに、更に下がろうとその身を壁に貼り付ける。