暴君と魔女






四季の言い分に「確かに」と無言で納得し、思い返せば初対面からだいぶ辛辣な態度だったと気がついてしまう。



「お前って・・・意外と腰強だよな」


「・・・・・どういう意味ですか?」


「忍耐力というか・・・辛抱強いというか。なかなか俺の下で耐え抜く人間は少ないぞ」


「ああ・・・・、望様はお坊ちゃまで我儘ですからねぇ」



さすがに・・・・・イラっとしていつもの自分の浮上。


仕返しとばかりにすばやく身をかがめ細い首筋に噛みついてやった。



「っ・・・・・・」


「人を馬鹿にするならそれなりの覚悟を持って口にするんだな」


「す、すみません」



半泣きの姿に満足するとようやく取り戻したペースにどこか気が抜けて、やっとその姿に対しての疑問が浮上した。



「そう言えば・・・・、その装いはどこから発生した?」



当然の事ながら女物の衣裳なんてストックしてある筈もなく。


しかも四季の纏っているそれは確実に高価な衣装だと手触りや装飾で分かる。


給金を必要以上に自分の手にしない四季がこんなものを自分で買える筈がないし。


そもそも四季がこんな物を欲しがって身に纏うとも思えない。


そこまで答えを打ち出して、目の前の四季がどう答えようかとワタワタしている姿を見て思いだす違和感。


家に入った時の微弱な違和感の正体に気がついた瞬間に眉根を寄せて舌打ちが出た。



「不法侵入で訴えてやろうかあの女・・・・」


「の、望様、その呼び方は・・・・」


「お前も!何いい様に遊ばれてるんだ!!」


「っ、はいぃぃ、すみませ・・・、」


「くそっ・・・・・、」



ガンッと壁を蹴って苛立ちを逃せば、ビクリと反応し身をすくめた四季。


だけど気づかう余裕もなく、むしろ自分より先に完璧な四季の姿を捉えた女に苛立ちが募る。



「・・・・最近、おとなしいと思ったら・・・・・」



了承得られなきゃ実力行使か!?


非常識な行為で俺の不在に押しかけ四季を口説いて魔法をかけたのは女神。


玄関で感じたのは非常識な叔母の嫌みでない品のいい香りだ。