暴君と魔女






「すみません。分不相応な格好をして。・・・すぐに脱ぎますから・・・」


「・・・いや、・・・さっきから何で謝る?」


「・・・っ・・・、自分に・・・見合ってないのは身にしみて分かっていますから」



ぎゅっと閉じられた目蓋と羞恥心に染まる四季の表情。


何故恥じるのか理解できない。


だって、今お前以上に綺麗だと思う女は俺の中には存在しない。



「・・・・・・驚くほど・・・・・綺麗だぞ、四季」


「・・・・っ」


「いつも通りの感じの悪さも作れない程・・・、その感想しか浮かばない」


「・・・・・・・・のぞむ・・・さま?」



本当にその言葉しか浮かばないんだ。


馬鹿みたいで、こんなのはらしくないと分かっているのに。


ここで称賛しなければ一生することがない程の完璧さに見事心奪われ魅了される。


今すぐ抱きしめて口付けたいと思う衝動はあるのに、それすらも許されない様な神聖さを感じ。


躊躇いながら出来た精一杯の接触。


少し色づいた頬に指先を這わせると、掌にその感触を広げて四季の顔の熱を感じ取った。



「・・・・触っていいか?」


「・・・・・・もう、触ってます」


「・・・・・・・・・・キス・・・していいか?」


「・・・・・・・・・それは・・・・私が言おうと思ってました」



狡い・・・女。


お前の言葉と気持ちが掴めなくて苦しんでる俺を見て楽しんでいるのか?


恥らう四季にそっと頭を傾げ唇を寄せる。


触れた瞬間に緊張したように四季の体に力が入ったのを感じて口の端が上がる。


軽く啄めば僅かに体の力を抜き、更にしっかりと重なりを深めれば、シャツの胸元にそっと伸びる四季の手。


添わされた手の熱にドキリとし、もどかしくなって四季の背中に手を回し完全なる姿を胸に抱く。


高まる感情とは別に重ねているキスは慎重で、ゆっくり確認する様な柔らかいキスが妙に心地いい。


いつまでもしていられそうなそれに、さすがに一呼吸置こうとゆっくり名残惜しく離していけば。


長い睫毛の目蓋が開き俺を映しこむ四季のグレー。



「・・・・・不思議です」



響く四季の声にクラリと酔いそうな感覚に耐え疑問を返すように覗き込むと。



「・・・望様が・・・・お優しいのは・・・・・・落ち着きません」


「・・・・・嫌味か?」


「そう言うつもりでは・・・・・、ただ、あまり素直に褒められた記憶が・・・・」