「出迎えも無しとは・・・・、言い身分だな四季」
「ちょっ、駄目!嫌です!!」
嫌?
嫌とかぬかしたかこの女。
何故か拒絶反応を示す姿に一瞬自分の移り香を心配したけれど特に心配する様な匂はせず。
更に疑問を強めて未だはっきりしない姿に詰め寄ってしまう。
「四季、いい加減にしろ」
「だ、だから・・・、どうぞ先に着替えて来て下さいませ」
「あっ?いつもこのまま来てるだろうが?」
「っ・・・、あ、会いたくないんです!!」
一瞬・・・・思考の停止。
少しばかり鋭利な言葉に腕の痛みを忘れそうになる。
会いたくないって・・・・・、
俺の家に住んでいてよく言えるセリフだな。
さすがに冷静さを取り戻してくれば理不尽な物言いに少し苛立って、その距離を一気に縮めると強引に腕を掴んで月明かりの下に引っ張りだす。
「四季っ、おまーーー」
「・・っ・・・・・・」
苛立って怒気を孕んだ声が一気に消えた。
絡んだグレーが驚きと戸惑いに揺れて、対峙する俺も驚愕で固まる。
2人して不動になって、ふわりと風だけが時間を刻むように流れていく。
驚いた。
元々この女は素の姿で人を引き付ける魅力を持っていると気がついてはいたが。
「っ・・・・すみません。・・・似合わないのは重々承知です」
耐え切れないと顔を逸らした四季を無意識に自分の手でこちらに顔を戻していく。
そして、逃げられないように軽い力で固定すると、しっかりその姿を確認するように視線を走らせて息を飲んだ。
「・・・・・驚いた」
「・・・すみません」
何故謝る?
謝る様な醜態なんてないだろう。
むしろ・・・・、さすがにその場しのぎの悪態すら浮かばない程完全な美だと思ってしまう。
決して元に支障がない程度の薄化粧に、普段はさらりと下ろしている髪を横に流れるようにセットしてあり。
光沢のあるアイボリーのロングドレスはシンプルで体のラインに沿って落ちる。
魔女というよりは・・・妖精・・、女神?
そんな名称が当てはまりそうな四季の姿に思わず見惚れた。
俺の珍しくの無言をどうやら悪い方にしか取れないらしい四季が、そわそわとしてから距離を置く様に俺の胸を軽く押し返す。



