暴君と魔女








はっきりと響かせた自分の意思表示。


唖然と固まる彼女が徐々にその言葉を理解し始めると屈辱的な表情を浮かべてくる。


ああ、目ざわりだな。


もう・・・・・いらない。



「お引き取り下さい。・・・・・・もう、二度とお会いする事はないでしょうが」


「望さん?私と別れると言いたいのですか?」


「・・・・・・・そもそも、・・・・・お付き合いした記憶も無いのですが?」



偽善的な笑顔でさらりと返せば、怒った表情から一気に血の気が引いた様な彼女。


ますます冷めていく感情で、存在を無視してデスクに体をひねれば、背中に絡んでくる存在に嫌悪が走る。



「ま、待って、・・・お願いですから押しかけた失礼はお詫びしますから」


「・・・・・・・・・・・本当に、・・頭の悪い女だな」



もう、・・・・擬似的な対応も品切れだ。


振り返りながら自分の体から張り付いていた女を引きはがすと、感情も抱かない眼差しで見降ろし終止符を打つ。



「もう二度と・・・・目の前に現れるな」



言い放ち、もう縁は切れたとデスクに歩き出す。


頭に浮かんだのは自分に香水の移り香が無いか?と、言う事。


あの女は俺から強い香りがするのを嫌うから。


と、その姿を思い出し小さく口元に弧を描く。


瞬間、、


ほぼ同時に感じた気配に振り返り、自分に迫った危機にすばやく反応した。



「・・・っ・・・・・・・」



ひらりと交わしたけれど、それは不完全に腕を掠める。


スッと熱が走った腕がじわじわと痛みを強めていって、時計の巻きついている手首に生温かい物が伝って落ちた。


そして絡む狂気的な眼差し。



「許さない」



響いた声に嘲笑的な弧を口元に浮かべると、更に逆上した彼女が手にしていた血のにじむナイフを再び俺に向ける。