暴君と魔女









パソコンの画面を眺め、その数字や結果に眉根を寄せる。


特に大きく不備があるわけでもないけれど、決していい結果とも言いにくいそれにしばらく見入って画面を閉じた。


これといって今動くほどの事でもなく、もうしばらくは様子を見ようと結論が出たから。


それでも・・・・、


こんな風に結果に満足いかずに画面を睨む事は久しぶりだと思ってしまう。


それこそ、四季を雇ってからは初めてに近い。


四季の予言は恐ろしいほど的確に俺の行く道を照らしていて、すっかりその光に頼り切って歩いて来ていたから久々にその薄暗さに足が止まった。


まぁ、こういう事もあるだろう。


必ずしも自分に栄光が降り注ぐ物で無いだろうと妙に納得してその薄暗さには対して疑問は抱かない。


むしろ今不意によぎった疑問に書類を手にした手が止まり、ふっと確認するようにオフィスの扉を見つめてしまった。



「・・・・・・・・来ないな」



思わず口にした言葉の主要人物は愉快な好敵手である美麗な叔母。


いやに四季に興味を抱いていた彼女はしばらく俺にそれをせがんでくると思っていたのに。


あっさりと引きさがってから2週間は経ちそうだ。


別に寂しいとか言う感情からではなく、なんとなく不気味な静けさにあまりいい感じがしないだけで。


その不穏な静けさに舌打ちを響かせると扉がノックされ視線を移した。



「失礼します」



声を響かせた秘書に返事を返せば開いた扉から声の主と、また別の女の姿。


だけどさっきまで思い浮かべていた姿ではなく、むしろさっきの予想の人物の方がマシだったと心で溜め息をつく。


秘書の後ろに育ちのいい物腰でこの部屋に入り込んだのは、今までも何度か関係を持った女の1人。



「望さん、お久しぶりです」


「会社までお越しいただくなんて、連絡いただければ出向いたものを」



表情ばかりは笑顔を携え、言葉には嫌味を含み切り返すと、それを理解していないだろう彼女がしっかり色を重ねた唇に弧を描く。


濃いな・・・・それに・・・香水臭い。


まだ僅かに距離があるというのに感じる匂いに、思わず眉根が寄りそうなのを必死に堪えると。


そんな事などまるで分かっていない彼女が、秘書がその扉を閉めたのを確認し俺の目の前に歩み寄ってその手を胸に添えた。