暴君と魔女






「今も・・・・愛してるのか?」



口にして、すぐに襲いかかる後悔で四季の体を抱きしめる。


すぐに反応を見せた四季の顔を確認したくなくての行動。


そして、その言葉を口にした自分の顔も見られたくない。



「・・・・望様?」


「・・・・・・・いい、今の質問は忘れろ」


「あの・・・」


「答えるな」



少しきつめに言い放った声に四季が口まで込み上げていた言葉を飲み込むのが分かった。


本当に・・・・何をしているんだか俺は・・・・。


もういない人間に嫉妬して、


もういない人間の存在に心が怯む。


簡単にこの腕の中の存在を奪い返されそうで、


胸がざわめく・・・・・。



「四季・・・・・、」


「・・・・・・はい」


「仕事の一環でいい、」


「・・・・・・望様?」



馬鹿だな・・・俺は・・・・。


何を求めてる?



「嘘でいいから俺を愛してるって言ってみろ」


「・・・っ・・・・・」


「言え・・・・・」



耳に入り込む四季の飲み込んだ息の音。


それを表情が見えないから余計に最悪の響きにしか聞こえず、自分でも馬鹿らしいと分かっているのに取り下げずに強要した。


パワハラだな・・・・・。


それでも・・・・・・、この魔女は俺に悲しいほど従順で、恐ろしいくらいに甘い。


そっと、俺の頬に伸びた四季の指先。


その優しい熱にそっと顔を上げられグレーとゆっくり視線を絡ませれば、柔らかく微笑む四季を捉えた。



「・・・・・・私は・・・望様の物です。

・・・・・・・・望様を・・・愛してますよ・・・・・」


「ふっ・・・・・・・・嘘つきだな」



言わせたくせに皮肉に嘲笑を漏らす自分の最悪な反応。


それなのに微笑み続け受け入れる四季の姿に、スッと細い体を抱きしめキツク身を寄せる。


唇が四季の耳に触れて、その渇望を小さく今にも消えそうな声で響かせた。



「・・・・好きだ・・」



無言を返事にただ背中に回った四季の手のぬくもりに切なくなる。


お前の本当の気持ちは・・・・・どこにあるんだ?


こんな風に抱きあってもいつまでも不確かな感触の存在にどんどん沈んでいく。


愛するとは・・・・・恐い事なんだな。