「正確には・・・秋光が産まれた後にそうなったと言いますか。・・・事故で・・・車椅子の生活で」
「・・・・・お前と出会った時にはもうそうだったのか?」
「・・・・はい、奥様は・・・同じ事故で無くされたそうです」
少し・・・・複雑な感情が胸で疼く。
だけどもなんと表現していいのか分からない葛藤で、ヤキモチでもなくて、同情でもなくて、とにかく姿の捉えられない後ろめたさで四季の髪を撫で誤魔化した。
珍しく言葉を返さない俺に苦笑いを浮かべる四季が髪を撫でた行為に返す様に身を寄せて、より触れあう範囲の広がった肌にお互いの熱が伝わってくる。
「・・・・・同情ではなかったのですよ。・・・・・これでも彼を愛してましたし。・・・・自分の子供は産めなくても秋光がいますから」
「・・・・・・・それは、自分が持っている女としての権利を半分捨てているのと違うのか?」
「いいえ、・・・・・彼も同じ事を心配していましたけど。彼とこんな風に愛しあえなくても・・・・私は一緒にいる事が幸せだったので」
「・・・ふんっ・・・・聖女気取りか。・・・・・ご苦労な事だな」
我ながら・・・・感じが悪いな。
自分の弾いた言葉が明らかに悪意の塊だと自負するくせに、それを訂正するでもなく、補足するでもなく言いきると。
スッと向けられた四季の視線。
その眼に非難されるのに小さく怯むのに、四季が示した反応はまるで悪さした子供に微笑む「仕方ないですね」という感じの苦笑い。
まるで俺の心の内は全て見透かされているようで、不愉快だと視線を外せば宥めるように俺の背中に回る指先。
「・・・・・望様の熱は・・・・気持ちいいですね」
手を回すことでしっかりと俺の体に密着した四季の存在や、小さく感じ取れるその鼓動に今まであった葛藤もゆるゆるとほどけて消えていく。
四季の魔力だろうか?
それでも残る小さな嫉妬の塊。
四季が・・・・・その男は愛していたとはっきり告げた事。
俺にはその身もこの熱も、その男とは共有できなかった物を全て差し出したくせに。
俺の得たくても得られない感情はその男に捧げたって事か。
こうしてる・・・今も?



