暴君と魔女













なんの・・・・裏もなく、


なんの言い訳もなく・・・・・


ただ・・・・四季に求められたいという本音。



求めているのに叶わない関係。









乱れた呼吸を整えるように四季に身を預けてそんな淡い願望もゆっくりと飲み込んでいく。


場所を変えて溺れた熱情の直後。


気がつけば汗ばんでいるお互いの体が、ジワリジワリと部屋の空気に冷やされて。


不意に、寒いかと体をゆっくり起こし乱れて皺の寄っている布団に手を伸ばそうとすれば、俺の腕にそっと絡む微力な力と熱。


スッと視線を戻してそれを与えた姿を見降ろした。



「・・・・なんだ?」


「・・・・いえ・・・・あの、」



別に威圧したわけでもない。


至って普通に返事をしたと思う。


なのに何故か反応を返された事に、元々事後で紅かった顔を再び色濃くした四季が、腕に添えていた指先を更にしっかり絡めてきて視線を落とした。


何だ?


いつものように少し攻撃的な反応で問い詰めようかとも思ったけれどその姿が行為後の余韻の様な甘さを含んでいたから崩したくなく。


ただ黙って様子を伺っていれば、返される天然故の凶器の鋭さ。



「あの・・・・・・寒い・・・です」


「・・・・・ああ、だからふとーー」


「離れないで・・・・・・・ください」


「・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・抱きしめて・・・ほしいです」



駄目だ・・・・勝てない。


恥らいながらもなんとか告げて、言い終わるなり耐えられないと顔を覆う姿に。


四季が視界を覆っているが不幸中の幸い。


思わず緩みかけた口元を手で覆い顔を横に背けてしまった。



手放したく・・・ない・・・・・。



馬鹿女・・・・、俺を愛する事を拒むくせに・・・・


俺をどんどん自分に縛り付けていくのをやめろ。


ベッドにばさりとと倒れると、その振動で顔を覆っていた手を外した四季をグイッと力強く引き寄せ胸に抱く。


しっかり腕を回し、自分の鼻先を四季の髪に埋めれば、変わらない匂いに安心して目蓋を閉じた。


腕の中で小さく息を殺して身を預けている様な四季が、しばらくしてようやくその声を響かせてきた。



「・・・・のぞ・・む・・・様?」


「何だよ?」


「あの・・・・えと・・・・」


「ちっ、はっきり言えイライラする」



照れ隠しもあり乱暴に返事を返してすぐにそれが危険だったと後悔する。


そうだ、こういう時の四季の言葉は殺傷能力が高いんだ。


と、判断が追い付いてももう手遅れで、耳に響いた甘い言葉。



「・・・・・・・嬉しい・・・です」


「・・・くそっ・・・・・っとに、・・・お前なんか嫌いだ」


「・・・っ・・・・・すみま・・せん・・・・」



声が沈んだのはすぐに分かった。


ドキリとし、照れ隠しとは言えま逆の感情を口にした事で四季が少なからず傷ついたのは理解する。


ドクドクと心臓が早まって、どうすべきか真剣に悩んで無言になった。



あ、謝るべきなのか?



変わらずさっきの力のまま四季を抱きしめて、それでも表情の見えない存在に不安が高まり変な汗をかき始める。






だって、やる事しておいて『嫌い』は流石にないだろうよ、俺。