柔らかい微笑みで効能と目的を告げる四季の唇が指先から離れる。


絡んでいた指先も何の名残惜しさもなく離れた事に多少の子供の様な苛立ち。


そんな事は露しらず、再びその唇から柔らかい旋律を奏でながら蜂蜜の滴ったポットを手にし、滴った分を指先で絡め取り口に運び。


その甘さに満足の笑みを浮かべた唇が再び音を奏でポットを綺麗に拭き取り始めた。


シナモンと、蜂蜜の香りに酔いそうだ。


酷く・・・心地の良い酔いに・・・。


自然と、無意識に近い感じに背後から細いウエストを掠め腹部に手を回し、自分の胸に四季の背中を密着させる。


今度は意識的に細い首筋にそっと唇を寄せると、



「・・・・っ・・・」


「・・っ・・・・お前・・・・」


「す、すみませ・・・・」



四季がビクリと反応を見せた直後に腹部にあった手に感じる違和感。


ゴトンと床に落ちたそれが床にも琥珀色をジワリジワリと広げていく。


さっきは指先のみで感じた絡みつく感触が今度は範囲を広げて手の甲から指の隙間まで広がって。


不機嫌に四季を見つめれば苦笑いでこちらを振り返る。



「お、驚いて・・・手が滑りました」


「ほう、ミスだと認めたか。お前の事だから次は美容ですとか苦しい言い訳をしてくるかと思ったが・・・」


「あ、ああ、確かに美容にもよさそうな・・・」


「っ・・・馬鹿女」



嫌味を言えば納得する勢いの四季に呆れ、滴る蜂蜜の感触に舌打ちをする。



「・・・・勿体ないですね、とても高価な物なのに」



眉尻を下げ名残惜しそうに無残な結果になった蜂蜜に苦笑いを零す四季に僅かに動く悪戯心。


手にべったりとついたそれは指の先まで滴っていて、その今にも床に落ちようとしている物をそのままに、おもむろに四季の頬に拭いつけた。



「・・・っ・・・」


「・・・・・美容だ」



嫌味に口にして、頬から首筋をなぞり鎖骨程までまっすぐに甘い蜂蜜の線を残して離した。


自分の指先に溜まっていた蜂蜜は全て四季の肌に移り、薄く絡みついたそれは仕方がないと溜め息をつく。




「・・・っ・・悪魔」


「あっ?悪態らしきものが聞こえたが気のせいだよな?」


「・・・望様、食べ物を粗末にしたらいけないと、秋光でも理解しているというのに・・・・」