「ねぇ、好きなんだけど、」




そんな甘ったるい響きが俺に向けての一言だと気づくのは時間がかかった。

不良と言う枠組みの生き物なんだろう俺は。

抜きまくったアッシュグレーの髪に両耳にピアスはいくつぶら下がっているのか。

鋭い目つきは本来の顔立ちではあるけれど、学校なんて物は行かずになってどれほどか?

行かずにハタチを越え今は……22くらいだったか?

いつからこうなったのか、……本当に自分でも知らず知らずだ。

父親の顔は知らない。名前すら聞いた事がない。

母親は愛人っという枠に収まり、俺が出来た事が原因となり縁を切られたらしい。

記憶にある母は器用な人ではなかった。

不器用で、寂しがり屋で、だからこそ与えられた愛情に擦り込みの様に依存して……結果、俺を妊娠した途端に厄介者として捨てられてしまったのだ。

その時点で堕ろせばいいものを、寂しがりやな母はその虚しさを埋める様に俺を産み落とし、俺が13の歳に失踪し1年後に山奥から遺体で発見された。

自殺だったらしい。

失踪した時点で生存の確立なんて0だろうと思っていた。

悲しいとか寂しいとか思うより早く『ああ、やっぱり』と静かに思ったのを覚えている。

結局、俺と言う自分の類似品を産み落とそうがその寂しさは埋まらなかったという事なんだろう。

母の両親はとっくに亡き人で、天涯孤独と言える生い立ちだったのを知っている。

そんな孤独な女が甘い言葉や抱擁に流され愛人になって、子供が出来たとあっさり見限られ、それでも尚愛情に縋った末路が自殺。

珍しい一生でもなんでもない。

そこら辺によくある人生劇の一つだ。

母は弱かった。

ただそれだけの話。