それでも尚、驚かされるのはこちらの方であるらしい。

乱暴と言える力で掴んだのは細顎。

肌も白く傷一つない柔らかなモノ。

散らばるように俺の指に絡めとられた黒髪は細くてちょっとしたことでプツリと切れてしまいそうにも感じる。

さすがに怯むと思っていた。

驚愕にその目を見開いて、涙の膜を張り、次の瞬間には逃げ出してくれたらいい。

そう……思っていたのに。

大きな瞳は驚愕によってではなく普段からの大きさ。

長い睫毛に覆われたその目はきらりと光を反射させるけれど涙によっての仕業でない。

そしていつだって艶やかな唇はゆるりと弧を描き。

「やっとこっち見た…」

「っ……」

「今日も好きよ……玄斗」

そんな、的外れな好意を弾く。





変な女なんだ……ハルは。




あの日の出会いから何から、本人そのものが……俺にとっては未知との遭遇。