昼下がりの風は心地いい。
少しだけ開いた窓から部屋に入り込む風と程よい日差しと、腕の中のハルの存在。
気が付けばそのまま自分も眠りに誘われて、目を覚ましたのは玄のフニャフニャと泣き声とも言えない声の響きでだった。
ほんのりとオレンジに染まる室内の様子から夕方だと認識して、覚醒しきっていない顔を一撫で。
「……ハル、」
「……」
「ハル、夕方だぞ」
「……」
「……ハル」
「……」
「…………ハル、」
四度目の響きには…諦めと絶望と。
覚醒した自分の肌にほんの少し冷えたハルの余熱が残酷で、いつもと同じ綺麗な寝顔であるのにその目蓋はもう開かないらしい。
理解しているのに受け入れたくないと、そっと頬に伸びる自分の指先は震えていて、確かめる様に触れた唇からはもう呼吸も音も発することが無いのだと無情にも突きつけられた。
いつだって心地のいいリズムを刻んでいた鼓動もピタリと動きを止めていて……、
まだ…ほんのりと温いのに…。
「……ハル、」
呼べば起きそうなのに…。
「ハルッ、」
もう……『玄斗』と呼ぶ声は響かないんだ…。
「っ………嘘つきで……良かったんだよ、」
自分の声が震えて、嗚咽混じりで耳障りだ…。
嘘で良かった。
ずっとずっと付きまとってくれていて良かった。
それが……よかった………良かった……のに……。
「っ………ハル……」
やっぱり……お前なんて嫌いだよ。



