繰り返す日々の内に【運命じゃない】なんて意識をお構いなし、むしろ必然の様に俺との子を妊娠したハルが躊躇いもなく自分の中で育み少し前に産み落とした。
決して勧められる出産じゃなかった。
残り少ない余力や寿命を一気に消耗するのは明確であったもの。
医師は良い顔をする筈もなく、俺だとてその判断に迷ったというのに。
「私から、母親になれるっていう最初で最後のチャンスを奪うつもり?」
凛とした笑みと声音でそう言いきられてしまえば勝てる筈がない。
娘の人生を好きなようにと許している優しいハルの父親はそれを受け入れ認めて出来得る最大の補助をしてくれた。
さすがに自然に産み落とすという体力の消耗は負荷が大きすぎると手術による出産。
それでも恙なく問題もなく産まれたのは男の赤ん坊だった。
「玄(ハル)……」
そう名付けたのはハルだった。
少しでも自分の声を記憶させるように今も愛おしそうにその名を呼んで、まだ目も見えていない状態の玄の額に口づける。
相変わらず綺麗なハル。
でも、
「……痩せたか?」
「寝た切りだからね。産後なんてこんなものでしょう?」
「いや、他の女孕ませたことねえから知らねえ」
「そんな記憶があるとか言ったら包丁で刺してやる」
「………フッ…元気じゃねえか」
「残念ながら、しぶとく付きまとってごめんね?」
フフッと笑って皮肉った言葉を弾くハルには思わず失笑。
確かに、『運命じゃないから』とか『傍にいさせて』とか期間限定の様な文句で付きまとっていた癖に。



