そんなやり取りの日々だった。
ハルの秘密を知っても尚繰り返される日々。
そんな言葉を交わす一瞬さえ貴重であったと思う日が来るらしい。
こんなにハルは変わらず凛と綺麗なのに。
相変わらずとことこと靴音響かせついてきているのに。
抱きしめれば温かくていい匂いで気持ちいい。
口づければ俺にしか見せない表情で色めいて、合わせる肌は柔らかく、体の奥の鼓動はいつだって感情に合わせてリズムを刻むのに。
そんな事を思って、繰り返して、ハルを日々刻み込んで焼き付けて……。
もう……どれだけ繰り返した?
『運命じゃないから』
そんな意識は俺の体に絶えずあった生傷と一緒に薄れて消えかけていた程の日々の綴り。
「ハル、」
「……ん……何?」
「………悪い、【人違い】だ、起こしたか」
「……ああ、フフッ、そっか【ハル】の方か」
自分の声に反応してのそりと身を起こし眠たげな眼を擦るハルに、お前じゃなかったと示して腕の中の【本命】を示す。
そんな人違いにクスリと力なく笑ったハルが俺の腕に収まってる【小さい方のハル】に手を伸ばして抱き受ける。
「玄(ハル)……好きよ、」
すぐに弾かれ落とされた愛情の響き。
この瞬間のハルを見るのが酷く好きで尊いと脳裏にしっかりと焼き付ける様に見つめてしまう。



