運命じゃない恋






よく分からないけれど言うな!

そんな俺の意志さえ伝わらず。

いや、伝わって尚……、

「私…いつ玄斗の前から消えちゃうか分かんないの」

「っ……」

「もしかしたら明日にはいないかもしれない。下手したら1秒後もあり得なくない。……私に許された寿命って20年くらいらしいの」

「……」

「先天性の……難病でね、体が成長する程病気も進行しちゃうんだって。私のお母さんもそれで死んじゃったって…」

「……」

「私の……最大の秘密よ。内緒ね?」

相変わらず悪戯っぽくフフッと笑う声音と表情はいつも通りであるのに。

いつものように無邪気なものとは感じられない。

むしろ弾かれた言葉の重みで皮肉に感じて、感じる温もりが匂いが鼓動が心地いいと感じる程に苦痛で憎らしく思えて来る。

好きだと思う程憎らしい……。

「っ………お前なんて……嫌いだ」

「フフッ、……それでいいのよ」

突き放す様に、心底憎んだ響きで言葉を発した癖に、縋るように抱き寄せハルの肩に顔を埋めた。

そんな俺の頭を包み込むように抱きしめ、頭を撫でてくる手は酷く甘く残酷で、追い打ちをかける様に……

「好きよ……玄斗」

「っ……」

「…………弱く儚い生き物で……ごめんね」

そんな一言に……自分の内側の固定概念が一つ砕けて割れる。

ガラスの様に砕け散った破片がキラキラと散って、そんな刹那に頬を生温いものが伝って気持ち悪いと感じた。

ああ……そうか。

涙……か。

……弱くねえよ。




ハルは………俺なんかよりずっと強い女だった。