馴染んだ絶対の住処に入り込めばさすがに張り詰めていた感覚も緩んで息苦しさに玄関でヘタリ混んだ。
そんな真正面にハルが俺以上に息を切らしながらペタリと座りこんで、
「はぁっはあっ、……っ…ど…しよ」
「はっ、…はぁっ……あっ?」
「……初めて人殺したかも」
「殺してねえよ。あんなんで死ぬんなら俺はとっくに殺人鬼の域だっつーの」
アホか。と、今更青ざめワナワナとしているハルに呆れと苛立ちと。
ああ、イライラする。
今更血の生々しい匂いに変に興奮して、そこに混じるハルの匂いにもぐらりと逆上せる。
体が熱い…。
走ったせいもあるがそれだけじゃなくて。
厄介な熱が興奮に比例してじわじわと高まる。
そんな俺の葛藤など御構い無し、スッと伸びてきた細指が俺の頬の傷にそっと触れる。
ナイフで裂けた傷からは溢れた血が生乾きに広がっていて、すぐに押さえ込んだハルの指先には自分の血が生々しく色を帯びた。
「触るな、」
「……玄斗、」
「呼ぶな、喋るなっ……、今……余計な事すんな」
「……」
「変に興奮状態で……ヤバイんだよ。…お前の事……襲って犯しそうだ…」
自分のこみ上げる厄介な衝動を抑え込むのに躍起になる。



