目蓋の内側の砂がザリザリと眼球に痛みを与えて、それでもそちらに意識をむけてはいられぬ相手の追撃。
鉄パイプやらナイフやら…。
卑怯者だなんて詰る気はない。
それでも交わし切るには些か不利で、今もチクリと小さな粒手にその意識を引かれた瞬間。
「うぉらぁぁぁ___」
「っ……」
あっ、マズイ…。
そう思った時には振りかざされていた切っ先。
瞬きをした刹那には振り下ろされ始めていて。
血の匂いが生々しい。
俺をいつだって研ぎ澄まさせ興奮させてくれいたものなのに。
今は…集中を削いで、不快で……、
あっ…………会いてえ……。
「っ…あ………」
視界ではなく脳裏を過ぎったのは自分が追い払った懐っこい姿だ。
とうとう自分の存在が確かなものでなくなるかもしれないと思った刹那に、無性に会いたいと感じて。
その直後に入り込んだのは鈍い金属音と声になりきらない呻き声だ。
次いでドサリと砂埃を巻き上げながら呻いた男が目の前に倒れ、ようやくままなってきた視覚で捉えたのは、
「ハル…」
その顔にいつもの様な笑みはない。
余裕なんてまるで皆無で、荒々しい呼吸と動揺で肩を揺らして瞳孔を開く。



