久しぶりだ……。

血の匂い以外でこんな風に高揚して逆上せる様な感覚に目が回るのは。

喧嘩以外で自分の存在を肯定し安定できるのは。

何で……。

そんな疑問に答えを求めて、至近距離からハルの顔を覗き込めば……。

「玄斗……」

飲まれる……。

微睡み熱を帯びた表情に、声に、瞳に。

それに惹かれるまま顔の距離を埋めて、お互いの呼吸が唇にかかりあう感触まで得た刹那。

「っ……」

理性を引き起こしたのは細くも鋭く鼻孔を刺激した血の匂い。

元凶となったそれはハルの頬に添えていた自分の手に付着したものから。

臭い……、汚い……、

ああ、………ハルが汚れる。

「玄斗?」

気が付けば身を離すだけではなく、そっとハルの身を押し離している自分がいて。

先程まで色めいた表情であった筈が今は冷水をかけられたかのような驚愕の眼差し。

あ……せっかくの白い肌だったのに。

ほんの少し掠れたように付着した汚れは俺の手から移り染まったものだろう。

そんな瞬間にみるみると夢から覚めてリアルに回帰した感覚に満ちる。

冷静の回帰に口から零したのは、



「綺麗すぎて………目障りだ……」