そんな俺を察するように、
「フフッ、ね?諦めて私に好かれててよ。玄斗の運命を縛ろうってわけじゃないんだから」
いいでしょ?
そんな風に笑って皺の刻まれた俺の眉間に指先を這わせるのだ。
そんな瞬間に気が付いた事……、
喧嘩以外で人にこんな風に触れられたの久しぶりだという事。
ああ、もう抗う事さえ面倒……。
そう諦めてしまえば……。
「変な女、……俺お前嫌い」
「ふふっ、初めっから好かれようなんて思ってないよ」
ああ、ほらまた予想外、想定外…。
好きだと言う癖に、鬱陶しいくらい懐いて見える癖に、『好かれようと思ってない』だなんて分からない一言で俺の意識を引く。
『好きだ』と言われる以上に胸に刻まれて、変な女だと思う程記憶に鮮明になっていく。
「ハル……」
「ん?なあに?」
「…………何でもない」
ただ……呼んでみたくなっただけだ。
呼んで……認識してみたかっただけだ。
本当に目の前のいるリアルな存在なんだって。
音にしてしまえばさらにもっとと疼く衝動のままに、無意識に伸びた手がいつも光を反射させる白い頬に触れかける。
それでも視界に収めた自分の手が渇き始めて黒く変色した血に塗れているのに気が付き寸前でピクリと引いてみせた。
引いてみせたのに…。



