他愛のない言葉ばかりだ。

『あ、今日の月おっきい~』とか、『玄斗って身長おっきいよね。私って小っちゃいから羨ましい』とか。

俺に話しかけている様で、自己完結の様な報告の様で。

よく喋る女。

俺は一度としてその言葉に答えた反応を返してはいないのに。

飽きるだろうと思っていた読みは大外れだと、毎夜の懐っこい笑みと付いてくる足音に嘲笑われて、それが連日続いてしまえば……、

それが冒頭に繋がる。

いつもと同じくだ。

人の喧嘩に水を差す様にその存在感を示し、萎えた俺の後をとことことついて一人完結した言葉を投げ続けていた姿に振り返りそんな一言で拒絶を示した。

拒絶……だったんだ。

なのに、

返されたのは自分の望むような反応ではなく、パッと刹那に綻んだ笑みにはむしろこちらの心が気圧された気がする。

そんな自分に追い打ちの様に、

「やっとこっち見た…」

「っ……」

「今日も好きよ……玄斗」

「反応した」

「っ…………心底……ウザい、お前」

まるで受け入れ褒めちぎられたような歓喜を見せた姿には、そうじゃないだろ。とこちらは重苦しい溜め息が自然と零れる。

本当にウザい、面倒くさい、厄介だ。

その感情のままに邪険に扱い拒絶的な言動行動で応戦するのに、その全てが歓喜の糧だと笑みを見せる姿には立ち向かう気力も削げていく。