「早く乗れよ」
私は首を横に振る。
「あのね、ほら、駅すぐそこだし、学校にも間に合うからやっぱり電車で行くよ」
「乗れ」
「いろいろ、その…ありがとう。ごめんなさい」
「い~から、乗れ!!」
「んぎゃあぁ!!」
そう言うが早いか、車の中に引きずり込まれた。
狭い車内。
逃げ場はほとんどないので、後部座席の一番隅にカラダを寄せて、できるだけ佐々くんから離れる。
「家、本当に大丈夫だったのかよ。親とか」
「…え?…ぅ…うん!大丈夫…デス……」
やっと、口をきいてくれた。
でも、顔は流れる外の景色を見たまま、佐々くんは目も合わせてくれない。
朝起きて、一番にあやまった。
私ってば、しっかりベッドを占領してて、佐々くんはソファで寝てるんだもん。
何度も何度も謝ったんだけど、佐々くんは、“怒ってねぇ”って一回言っただけで、黙っちゃった。
そのくせ、足はもう痛くないって言ってるのに、“学校まで送る”なんて、言い出すし…
本気で学校まで送るつもりなのかなぁ…
きっと、うちの学校のオンナの子達、みんな佐々くんのこと見るよ?
そんなの、なんか、よくわかんないけど…
――イヤ…
車内に沈黙だけが流れる。
どうしよう、何かしゃべったほうがいいのかな…、なんて思った時だった。
「オレん家、病院やってんだよ」
外を見たまま、ふいに佐々くんが話し始めた。
「あのホテルの部屋も親父が学会やなんかで家帰ってくんの面倒な時とかさ、そおいうのに借りてんの」
「…え?…う、うん」
「オレは、星陵高校3年な」
「……へぇ…」
――そう、なんだ。
そして、また沈黙。
さすが高級車。
沈黙をごまかすような、タイヤがアスファルトを踏む音も、振動もほとんどしない。

