「はあ…、はぁ…は、…はぁ…」


交差点を渡りきったところで、私は予定通り立ち止まる。


どうしよう……

緊張してきた!!


制服が汗ばむ。

だって、すぐ目の前に、“彼”と彼女がいる。

2人は私に背を向けて、キスの真っ最中。

でも、彼女のほうが私に気付くと、その気配を感じたのか、

すぐに、“彼”が私のほうを振り返った。


ドクン……


――あ……


瞬間、音が消えた。

時間がスローモーションで流れる。


少し長めの薄茶色の髪。

そこから覗く、切れ長の鋭い瞳。

…が、私のことを、探るように見てる。


一瞬、自分が何をしに来たのかを、忘れて見とれてしまった。

だって、とってもキレイ。

その、キスに濡れた薄い唇が…、開いた。


「……なんか、用?」


ゾク……!


低めの響く声が、私の芯を揺らす。

ゴクンっ。

無意識に生唾を飲み込む。


「あ、ぁああの!…あのデスね!」


私は勇気を振り絞る。