オオカミ回路 ♥️ うさぎスイッチ(処体験ガール再編集)


“威厳”というものは、一朝一夕で身につくものじゃない。

その発言の声色、抑揚だけでなく、目線や態度、

空気……


――さすがは、剣菱…


あの成久が反論も何もできないまま、今度は深いため息をして、椅子を元に戻した。

その仕草に成久が小声を紛れこませる。


「…俺が話す。いいか?佐々…」

“ああ”


そう、目で合図した。


――狩野優華…


どういうことだ?

ここは、優香をあおった成久に任せたほうがいい。

痛いほどの緊張と静寂を、成久が破る。


「花美ちゃんが“剣菱”から籍を抜いて、母方の“霧里の”性に変わったのは中学に入る直前。その時、花美ちゃんと入れ替わるようにして、剣菱の本家に養子に入った子がいる」

「……」

「優香ちゃんのことだよね?」


優華は表情も変えず、黙って聞いている。


「そもそも剣菱の分家は極端に少ない。しかも、家系を追えるのは、近代まで残った分家のたった1つ。

その最後の女当主が他家に嫁いだのが昭和の初めだ。その時点で剣菱の分家筋は全部消滅してる。

それから数代、婚姻で性を変え、剣菱の血を引いている事すら忘れられていた子が、最期に嫁いだ家が“狩野”だ」


そう言って、成久がオレを見た。

まあ、ガキの頃から跡取りって事で、ジジイにいろんな集まりに連れまわされてるからな。


「狩野は…知ってる。でも、最近は…見ねぇな」


優華はゆっくりと腕を組み、わざとらしく考えてみせた。

そして、蔑むように笑いながら、あらかじめ決めていただろう、返事をする。


「私が直系の花美を追い出して、本家を乗っ取っただけでしょう?」


何が疑問だとでも言うように、でも…


「はた目にはそう見えるけど…」


そうじゃない…