「…お前ら、付き合ってたのか?」
「いや?自覚したの最近だし、それより初めて言ったし」
「優華に言ってねぇの?今、めっちゃ聞いてんじゃん?いいのか?」
そう言うと、成久は優華のほうをちらりと見る。
「これからゆっくり攻略する」
「……わけわかんねぇ…」
つい、苦笑う。
この場でわざわざ言う事じゃない。
オレを落ち着かせるためか、
優香を動揺させるためなのか……
おそらく、成久には何か計算があるんだろう。
「それより、今はお前の事が先だ。優華ちゃん、こっち来て」
成久が声をかけるが、優華はピクリとも動かない。
もう、相手に隙を見せないように、器用に心と体を固定する。
――花美と同じだな…
こんなところに、繋がってなくてもかまわない、
剣菱の血を感じる。
「ふざけるのも大概にして。…私は、帰る…」
「いいから座って」
成久は軽くため息をつくと、ポケットから手を出し、目の前の椅子を引いた。
優華は完全無視だ。
ふい…と横を向き、
引かれた椅子を避けて、階下に向かう階段に近づこうとした、
…その一歩め。
「いいから、座って。…狩野優華(カリノ ユウカ)ちゃん」
成久の告げたその名に、優香の足が止まった。
大きく、大きく見開かれる優華の目。
その瞳に見つめられた空間が、恐怖に竦んでしまったかのように、
時を刻む速度を落とす。
「…そう…、そうか…、ああ…なるほど」
熱に浮かされたように、優香が呟やく。
何度も、何度も、
そして、何かを確信したのか、
突然、スローモーションが解除される。
「…そういうことかっ!…下衆がっ!!」
ザッ…!!
勢いよく優華が振り返った。
その瞳に宿った、むき出しの憎悪。
「……話したいことがあるのなら、聞く耳だけは持しましょう。…座は不要です」
オレ達を見据えた、その殺気に、
それなりに修羅場だってくぐってきたオトコ2人が、
――ゾクッ…
いい具合に気を呑まれた。

