素直にも、花美がちょこんとオレの前に正座する。
両手を膝の上に揃え、リボンを、
ギュゥ……
…と掴んでいる。
少し拗ねたような上目遣いの大きな目が、オレを見てる。
両腕に押しやられた胸が、花美の顎の下で深い谷間を作ってて……
――……こいつ…わざとやってんじゃ、ねぇだろうなぁ……
オレは苦々しく花美を見る。
「…えと…なんで、ショウか……」
「なんでじゃねえよっ!」
思わず、感情に任せて怒鳴った。
その、怒気を含んだ声に、自分で自分に怯む。
花美も二重の大きな目をさらに大きくして、表情を固めた。
「…ご…、ごめ…なさ……」
リボンを握った手が、小刻みに震え始める。
「…違う。悪りぃ、今のはオレが悪い…」
クソッ……
軽く自己嫌悪。
オレは、オンナに怒鳴ったことなんかねんだよ。
本当に、さっきから、らしくねぇ……
オレは、グシャグシャと、前髪を無造作に掻きむしりながら、花美から視線を外し、シーツのしわをにらんだ。
言いたい文句が、山のようにあったはずなのに出てこねぇ。
まあ、当たり前か。
よく考えてみりゃ、花美は、なんも悪くねぇもんな。
大体、ヤっていいって本人が言ってるんだ。
誘いを受けたのはオレだ。
さっさと抱いちまえば、それでいいんだ。
でも……
なんか…さ……
オレは、眉間にしわを寄せて目を閉じる。
なんか、イライラすんだっ。
なんか、納得いかねぇんだよっ。
「ごめんなさい…」
ふいに、紡がれたその小さな声に、部屋の空気が震えた。
オレは、前髪の絡まる指の間から、視線だけを上げて花美を見る。
花美は、申し訳なさそうに俺を見てから、
「他の人、あたってみます」
と、深々と頭を下げた。
だから……
「そおじゃねぇええだろ!!」
「……へ?何が?」
「何もかもが、違うっ!!」
ボフッ!!
「きゃあっ!」
怒りにまかせて、手加減なしで花美めがけて枕を投げ返した。
勢い後ろに花美がひっくり返る。
そのまま、上にのしかかってベッドに押し付けた。
両手を絡め取って、花美の頭上に固定する。
――しまった……
そう、瞬間思ったけど、遅かった。
細い手首。
片手で簡単に動きを封じ込める、小さなカラダ。
やわらかくて…
甘い、花美のにおい……
――理性が、吹っ飛ぶ…

