外は思いのほか暗くて、朝どころかまだ夜が終わったばかり。

ぼんやり歩いていくうちに、藍色の空に浮かんでいた数個の星も消えてはじめて、

いつのまにか見覚えのある交差点に出た。

こんな時間なのに、数台の車が信号待ちしてる。

その、奥。

私が立つ交差点の反対側にみえた、その陽だまりに、自然と目が引き寄せられ、

離せず、

足が止まった。


「……佐々……くん……?」


ふと口をついた名前に、涙が出そうになった。


切なくて、

そのくせ、

うれしくて、


声にしただけで、心に羽が生えたみたいに軽くなる。


「…花美……?」


遠くて聞こえなかったけど、口元が、そう呼んだ気がした。

遠くて聞こえるはずないのに、耳の奥で、佐々くんの声が聞こえる。


幻なんかじゃないと、

そこに在る姿に、

いま、再確認する。


――私……この人が好きだ……


「花美っ」


――好きだよ…佐々くん……


きっと、これが本当の恋……


そして……


叶わない恋。